パンチラ追って知らない街へ

すべて作り話です

頼むからライブハウス行かせてくれよ

その日は、朝起きた瞬間からソワソワしてどうにも落ち着きがなくなる。何度も何度もチケットの所在を確認して、時間にルーズなはずのわたしが、はじまる2時間前にはゆうに現地に到着してしまう。その日着るものは物販にて調達する。タオルはわざわざ持ってい…

M-1ツアースペシャルに行ってきたんです

わたしの忘却曲線は、齢関係なく翌朝にはもう急降下してしまうから実際の記憶のおそらく50%も書けないだろうけど、それでもまだ覚えている範疇で、忘れたくないことから書き記していくこととする。 人生で二度目の、生でお笑いを鑑賞しに名古屋へ。 疫病の流…

私が有する救いについて

音楽 幼い頃、親から譲り受けたCDプレイヤー。初めて聞いた音源は父から借りたザ・ビートルズ「1」。母の精神疾患により、定期的に叫び声がこだまし怒号が鳴り響く夜、決まって自室にこもっては、部屋の隅にうずくまり最大音量で音楽を鳴らしていた。胸が張…

映画「滑走路」を観て翼になりたいと思った話

出逢うべくして出逢うものは、人間同士の出会いだけではない。音楽も文学も短歌も映画も出逢うべき時に、出逢うべくして、出逢うのだ。私にとってのそれは今、故・ 萩原慎一郎ただひとつの歌集「滑走路」である。 今年の夏に、私は自らの手で大きく人生を変…

ボリューム満点激安ジャングルに欲しいものなんて何もない話

近所にドン・キホーテがある。深夜まで営業していて、仕事で遅くに帰っても、残り僅かな消耗品のことを急に思い出しても、買いに行ける便利さに日々感謝の気持ちでいっぱいだ。ドン・キホーテは何よりも薄利多売で安物が数多く品揃えられている。この町に越…

拝啓、親愛なる大将、奥さまへ

大学1年生から3年生の後期まで、地元のスーパーマーケットでアルバイトをしていた。スーパーには珍しく深夜23時まで営業をしていたから時間を持て余す大学生にとっては都合のいいアルバイト先だった。そのスーパーの近くに、こじんまりとした居酒屋があって…

昨夜見た悪夢の話

そこはわたしの部屋で、窓からは電車が見えていた。普通ならあり得ない間取りだけど、窓を開けると同じ高さに線路があって、電車が通るたびに乗客と目が合う。突然、けたたましい衝突音とともに女性の叫び声が聞こえた。その直後部屋の窓が大きく割れた。窓…

つづきの夜に。

高校の頃通っていた塾でなんとなく仲良くなって、なんとなく帰る方向が同じで、なんとなく話の波長の合う友人から、卒業した今でも約半年~1年周期で連絡が来る。それはあまりにも唐突で、大胆で、毎回いつも驚いてしまうけど、久しぶり、の言葉のあとにわた…

灯台下暮らし

この8畳1Kでの暮らしを初めて1か月と少し。随分とこの部屋も私のことを家主として認識し、受け入れ始めてくれているのではないかと思う。朝、カーテンを開けると南西向きにある窓から、満遍なく日差しが入る。洗濯物が乾きやすく西日が見られることを理由に…

20200812

わざと部屋の一番目立つところに、あの夜引き渡された大きな紙袋を置いている。そのなかにはわたしが使っていたパジャマとエプロンと洗面用具、そしてもう二度と元に戻ることはないという強い決意が、丁寧に畳んで入れられていた。部屋に入るたびにわたしは…

カスタマイズ人生

今年も無事生きて、25歳をむかえることができました。おめでとうございます。を、ありがとうございます。いくつもの祝福たちを小脇に抱えて、一日中はにかむ頬を内側から噛み締めながら仕事に励んでいた。今年はいよいよ嬉しくなくなるだろうと思っていたの…

すがる

祖父の納骨式のあと、ちえこさん(父方の叔母)からひさしぶりに会わないかと連絡が来た。祖父の葬式で会ったのが十数年ぶりで、それまではお互いの存在にさして興味がなかったんだろうとおもう。知ろうともしなかったし、知ってほしいとも特に思わなかった…

スグナクマンが教えてくれたこと

それは小学生の頃、教室の隅におかれた児童文学書の本棚の中にあった。主人公はクラスメイトにいじめられていて、すぐに泣いてしまうおとこのこの物語。靴の中に大量の砂を入れられたり、給食の時間にスプーンがチョークの粉まみれにされたり、その物語の中…

昨夜見た悪夢の話

そこは川沿いの広い道路、大勢の観衆がなにやらざわついている。そしてその様子をわたしはテレビの画面から眺めていた。よくある街の風景、だったはずだこの瞬間までは。うしろからズドンと大きな音がして、カメラが写したのは、ひとりの警官の姿。その手に…

愛は四半世紀にも及び

朝怒鳴り声で目を覚ますこともしばしばあった、私たち以外の(テレビや物語の世界で見る)家族が正月や盆に親族一同があつまる習慣をふしぎにおもっていた、わたしたちは少しいびつで未熟だった。仲睦まじく寄り添いあうこともあるが離婚届けを目の前で泣きな…

選りすぐり

ぐったりと肩を落としながら、駆け足でバス停に向かう朝も、くたびれて重くなったからだを座席にあずける夜も、随分と慣れてきたところ。まだまだ道半ばで、息を切らし立ち止まる日もあれば、自分を奮い立たせながら歩を進める日だってある。一年また一年と…

トゲのある場所③

すぐシリーズ化してしまいます。 一年前のいまころはまだ見ぬ社会という広い広い海をみてこんなところ泳げるわけなどないと尻込みしていました。だけど時というものは残酷で、後ろから思い切り突き飛ばされて飛び込むことを余儀なくされた4月1日。時同じくし…

トゲの在る場所②

トゲの在る場所 ひとりで反省をして帰るには長すぎる道のりを車で走らせながら何度目かのため息をついた。夕暮れ時になると一気に視力が落ちてきて、対向車線の境目があいまいになる。向かってくるヘッドライドのなかに浮かぶのは今日の間抜けな自分の姿だっ…

アンチモニーと宝物のメロディ

話したいことなんて山ほどあった。なにを話してもきっと細い目を更に細めて、笑ってくれるに違いなかったから。なんでもないようなわたしの暮らしを、会えなかったあいだに過ごしてきた日々のことを、ただ聞いてくれさえしたらそれでよかった。会いに行くこ…

ふるえれば夜の裂け目のような月

あなたが特別に したんだぜんぶ いやはや、一緒に星を見てから1年が経ちましたね、早い。ちがう、二日まちがってる。僕は曜日だって覚えてるのに、ほんと忘れっぽいよね、そろそろ直して。ごめんごめんって平謝りする。いつのまにか春夏がおわり、秋になっ…

プチガトーのうしろすがた

わたしは物心ついた時からケーキが行儀よく並ぶショーケースを、裏側から眺めていた。明るくライトで照らされながら規則的に並ぶ、きらめくケーキの後ろ姿を見ることがだいすきだった。名前も知らないクラシックの音楽が常に流れる店内は、道路に面して店を…

トゲの在る場所

毎日こてんぱんに叩きのめされている。今まではどうにかして逃げ道を探して避けてきたおおきな壁にまっこうから向かっていかなければならない。それは想像を絶するほど高く分厚く、なんならトゲとかもあって。まだその壁を登る手段も得てないわたしは壁のす…

星に帰った不道徳ちゃんの話

あなたとの夜を、何度想像しただろう。出会った頃には既に人のもので、手には入らなくて、手に入れてはいけなくて、だからこそ欲しくて、でも決して多くを望んだりなんかしなかった。 だから、二人きりの時間を過ごそうとあなたから言ってきてくれたときはど…

‐ピンクネオン‐

月末にはここをやめるの。毎週火曜日に訪れる常連のその人はお酒を飲む手をピタリと止めて、わたしの顔を覗きみた。それは、本当に?兼ねてからわたしは腰掛けのアルバイトにすぎなくて、一生をここで従事するつもりはないということを伝えていたはずだった…

昨夜見た悪夢の話

そこはわたしの家で、確か夜で、両親は眠っている。突然猛烈な吐き気に襲われてわたしは暗闇の部屋を這いずってトイレに辿り着く。そのトイレは六畳ほどの部屋の奥にポツンとある洋式。便器を抱え込んだままうずくまってずっとずっとずっと吐き続ける。酒を…

白いブラウス溶かしてメロディ

始まる前のあの独特な雰囲気は何ものにも例え難い。今まで感じたことのない空気に気圧されてしまいそうだった。緊張感に似ているものの、どこか浮ついた空気を肌に感じて。ほんとうは一人で見に行こうなんて大それたこと思っていたけれど、きっと入り口のネ…

椿町発展街⑤

モテるでしょう、顔を見て目を合わせるたび男の人は皆、そう言う。そんなことないですよ、わたしは謙遜を試みる。夜の仕事に従事するおんなのこたちは皆、自分の価値を知っている。それが年を取るたびに磨り減っていくものだということを知らない。価値のあ…

椿町発展街④

椿町発展街① 椿町発展街② 椿町発展街③ 先輩からの着信に気づく。それは二次会が解散して帰路につこうとしていた矢先の出来事だった。へべれけの先輩が言う「華木、まさかもう帰ろうとしてんのか?夜はまだこれからだろうが!」帰りたい、と真っ先に思ったけ…

梅雨生まれ

かかってこい、まだ見ぬ未来。 と、今日の自分めがけて啖呵をきってから早一年。本日をもちましてわたしは22歳です。今年もたくさんの祝福を全身に浴びながら、このブログを更新します。毎年わたしが産まれた日を覚えていてくれて、ありがとう。 もちろん今…

椿町発展街③

椿町発展街① 椿町発展街② 好きな男の前でとことん従順になってしまう女なんて、この世の中に掃いて捨てるほどいるんだろう。そんな女どもの気が知れない。なのに、いつからだ、わたしも気がつけばそちら側の女だった。 ずっと伸ばしていた自慢の黒髪を鎖骨あ…