パンチラ追って知らない街へ

すべて作り話です

スグナクマンが教えてくれたこと

それは小学生の頃、教室の隅におかれた児童文学書の本棚の中にあった。主人公はクラスメイトにいじめられていて、すぐに泣いてしまうおとこのこの物語。靴の中に大量の砂を入れられたり、給食の時間にスプーンがチョークの粉まみれにされたり、その物語の中に描かれていたいじめはひどくつらいもので、題名に「へんしん!スグナクマン」とあった。

わたしは結末を覚えていない。題名にはへんしん!とあるくらいなのだから、主人公のおとこのこは泣かないように強く、逞しく、なっていくのだろうか。あるいは、泣いてしまうじぶんを受け入れ、泣き喚きながらいじめっこに立ち向かうのだろうか。

わたしはすぐに泣く。悲しくて、悔しくて、情けなくて、あるいは嬉しくても、泣く。あらゆる感情がすべて、涙に変わる。先日23歳になったばかりなのだから、もうあまり人前で泣くことは普通じゃないことくらい重々承知しているのにもかかわらず、だ。泣いてはいけない。そんなこと言われなくてもわかっている。私だって泣きたくて泣いてるわけじゃない。抑えようとすればするほど、堪えるたびに。瞼の裏で涙が満ちていく感覚が分かるのだった。

泣かない人のことを強いと思う。とはいえ、すぐ泣く人のことを弱いとは決して思わない。すぐ泣くから物事を諦めたわけではないし、すぐ泣くから投げだしたいわけではないことを他の誰よりも分かるからだ。どうしようもないほど言葉にならない想いがあって、吐き出し方や伝え方が分からないから涙が出るのだ。

どういった作用が働いているのか分からないが、昔から泣き腫らしたあと、きまって力がみなぎるのだった。そしてほんの少しだけ、泣く前の自分よりもうまくできることが増えるのだ。よく泣く人にしか分からないと思うけど、「涙の数だけ強くなれる」ありきたりな慰めの一言は、真実だった。

へんしん!スグナクマン、泣ける勇気をたずさえて泣ける強さで、打ち勝って。