パンチラ追って知らない街へ

すべて作り話です

ふるえれば夜の裂け目のような月

あなたが特別に したんだぜんぶ

いやはや、一緒に星を見てから1年が経ちましたね、早い。ちがう、二日まちがってる。僕は曜日だって覚えてるのに、ほんと忘れっぽいよね、そろそろ直して。いつのまにか春夏ときて、秋になった。初めてのデートはたしか台風が来ていてあの頃は傘をもって助手席を開けて濡れないようにしてくれてたような英国紳士だったのに、今はそういうの無くなった。一日中いっしょにいてもぜんぜん息苦しくなかったから、付き合おうことを決めた。

春は桜を見て、夏には海へ行った。秋は、去年行けなかった紅葉を見に行って、冬にはまたカニが食べたい。ケンカはほとんどなかった気がする。不満はその場で精算することをわたしは決めていたから。いつのまにかもうこんな季節ですか、こわいねーすぐ年取る。車のドアは開けてくれなくなったけど、寒いって言ったら布団かけて抱きしめてくれる。熱いって言ったら、布団をはいで頭を撫でてくれる。わたしが泣いてると何も言わずに、ティッシュで涙を拭いてくれて、りんごジュースが飲みたいって言っただけなのにお気に入りのお菓子を3つも買ってきてくれる。あなたの好きな人はどんなひとと聞かれたとする。ほとんどのひとは人の色恋沙汰に興味などないだろうから、そう行った場面に遭遇したときのことを想定する。そうだねえ、わたしの笑わせかたと、泣き止ませかたを誰よりもよく知っているひとだよ、なんて紹介したい。それから、それをわたしは一度も求めたことなんてないのにね、とも。

結婚とか考えたことないの?ないことはない。けど、できたらいいなとは思ってる。でもわたし、今まで近しくなったひとたち全員と、そう思ってきたような人間だからこの感覚が正しいのかはあんまりよくわからない。ただ、この先もわたしが泣いたときは静かに涙を拭ってくれたら嬉しい。笑ってたらいっしょに同じくらい笑っていてくれたらわたしはきっと幸せでいられるんだろうとは思うよ。

去年、一緒に見に行った流星群が今年も極大をむかえた。あの部屋にはこたつが用意されていて、着々と冬支度を始めていた。わたしはまだ夏から履いてるハーフパンツのまま寝てるっていったら風邪引くよ、って叱られてしまった。

最寄りのスーパーで鍋の具材を買う。今日は鍋しようよ。もう何回も思うけど、レジ袋からのぞくネギを持つ後ろ姿が愛おしくてたまらなくなる。写真に収めてるのがバレて、なんでこんなしょうもないところ撮るの?そんなの教えないけど、わからなくていいよ。何も特別なことなんかしてないけれど、また隣で冬を迎えることが嬉しい。具材を入れる。煮立つまでふざけあう。一年前、ネギの切り方で怒られた気がする。すこしは、上手になったでしょ。

わたしの隣にいる、何も変わっていないようでいて、少しずつ変わる。変わっていく。変わらない日々を望んでいたわたしもきっと、いつの間に変わってく。変わらない優しさを、変わらない愛おしさを、変わりゆくふたりで、変わらず愛していきましょう。