パンチラ追って知らない街へ

すべて作り話です

猪突猛進クリスマス

今日のためにあらかじめ用意されていたような失恋ソングを延々と聴きながら 冬の星空を眺め歩いてるわたしはまるで よくあるバンドのMVに出てくる女の子みたいだし、だれか曲にしたほうがいいんじゃない?メリーメリークリスマス、みんなはどんな夜を過ごしたの。

容姿だけでわたしが人のことを好きになるわけなんかなくて 出会ったそのときから身に纏う空気や、佇まいや、ふとした仕草にいつのまにか心を持っていかれてた。たまたま惹かれた人の顔がどタイプだった、ただそれだけ。どうしてもふたりの間にそびえたつ高い高い壁を壊してしまいたい一心で、ありがたいことに絶好の口実がそこにはあって、これを逃したらもう機会なんか訪れないんだろうなって、思って。何度も書いては消してを繰り返し、やっとの思いで送信ボタンを押した二行のメッセージは 思いのほか早く返ってきた。些細な言葉のひとつひとつに一喜一憂する感情がなんだか懐かしくてたのしくて仕方なかったな。

わたしは人を見る目だけはあると思っていて、やっぱりその目に狂いはなかったというのが本日の感想です。

今日のために慌てて買った女の子らしいコートも、デートを断った年下のバンドマンも、丁寧に整えた爪も、いつもよりうまくいった前髪もぜんぶ無駄じゃなかった。昨日までの関係のままだったら絶対に知ることができなかったであろう、実はかなり女々しい人だということ。想像以上に優しすぎるところ。想像通り真面目すぎるところ、誠実なところ。高い高い壁の向こうがわをきちんと知ることができて本当によかった。知ったことでさらに惹かれてしまったなんてことは、秘密にしておこう。

ラブソングみたいなめくるめくクリスマスを夢見ていたけれど 今のわたしにはすこし早かったみたい。必死に探したディナーにぴったりの洋食屋さんは、ランキング上位のくせに恐ろしく空いていて不安になったものの、カップルが1組だけいて安心した。おもえば世の中のカップルは普通、24日の夜にデートをするんだった。カップルではないから25日でよかったのかもしれない。

向かい合って食事をするのは驚くほど緊張してしまって、カウンター席を選べばよかったと後悔した。前菜とスープの味はあまりおぼえていない。途切れ途切れの会話がバレないように、食後の紅茶を何度も啜るフリして誤魔化して、やっぱり真っ直ぐ目を見て話してくれるところが好きだなあ、なんて呑気に思ったりして。対するわたしはどんなふうに映っていたんだろう。

かくして久しぶりのドキドキワクワクのロマンスは あっさりすっぱり幕を閉じてしまったけれど、不思議と程よく清々しい。火照った顔に突き刺さる寒さがとても心地よい、そんな夜です。

「迷ったら勇気のいるほうへ」わたしの座右の銘はこれからもずっとこれしかないと思ってる。真ん中が割れるタイプの半熟オムライスを、初めて一緒にたべたひとが好きな人でよかった。玉砕メリークリスマス!一寸の悔いなし。素敵な時間をありがとうございました、良いお年を。